緋彩さんの歴史

恋愛感情というのは、成長とともに分かるようになるものだと思っていた。

中学に入学して周りが好きな人や性に関する話をするようになり、違和感を覚え始めた。友達や周囲が好きな人の話でそんなに盛り上がれる理由が理解できなかった。

 

私を好きになってくれた人がいた。周りは私とその子を一緒にしたがったが、私はそれを回避し続けた。

高校では彼氏彼女関係の子達がもっと増えた。自分に話を振られるのがちょっと怖くなった。ほぼ女子校だったため、高校時代は異性関係はほぼ何も無かった。

 

大学に入学し、外に出ると私が誰かの恋愛対象になることが増えた。

たまたま入ったお店屋さんで知らない異性に告白を受けた。多分、恋愛感情も性的欲求も、その気になれば、そういう状況になれば分かるものだと思った。だから、サークルで一緒になった後輩から告白された時も断らなかった。全く理解できなかった。身体を預ければ、理解できるようになると思った。ただ痛みと恐怖だけが残った。

自分を恋愛対象にしてくれた彼の気持ちを知りたかった。好きなものを知ろうとすればするほど分からなくなった。距離を縮めたかったが、彼にとっては全く縮まらなかったらしい。

 

Twitterで見たことがある。恋愛対象が同性でも異性でもない人の存在を。

好きな気持ちが恋愛感情とは違った。性的な欲求を知りたいと思うほど知れない自分はもしかしたら、その類の人なのだろう。そう思うと虚しい気持ちになった。私にはみんなが知る、恋愛感情や性的欲求を知ることができないのだ。