伶さんの歴史

私は14歳ごろ、いわゆる思春期になっても男子に興味がなく、かといって女子に興味があるわけではありませんでした。

私にとっては男子も女子もみんな友達でまったく違いがなかったのです(小さい頃から男勝りで男子の友達の方が多かったです)。

男子に告白されても女子に告白されているような感じしかせず、付き合いたいとかキスしたいとかいう気持ちはまったく出てきませんでした(多分、異性愛者の方には同性の方から告白されても恋愛対象にならず、同性愛者の方にとっては異性の方に告白されても恋愛対象にならないのと同じ感覚だと思います)。

キスと言えば何億もの雑菌が口内にはあるのになぜだろう…と不思議に思っていたほどです(笑)

 

でも別に自分がおかしいとか悩んだことはありませんでした。ただ多分皆さんもあるあるかもしれない「恋愛話に辟易」はしていましたし(今は聞き役に徹して楽しく聞けるようになりましたが(笑))、いくら自分が「興味ない」といってもまったく信じてもらえなかったり、「いつか好きになるよ」攻撃(笑)、友達として普通に接している男子友達とのことを冷やかされたり、と嫌なこともたくさんありました。

でも、やっぱり周りで恋愛していて悲しんだりストレスをためまくっている友達を見ていると、「大変そうだなあ。恋愛感情なくてよかった!」とむしろ大喜びしていたほどです(笑)。もちろん面倒くさいことも多かったですが、やっぱり恋愛感情が無いのはデメリットよりメリットの方が多いと思いましたし、人生絶対楽しいと思っていました(今も思っています)。

 

私はトラウマなどで恋愛感情がないわけではありませんが(あったら隠さずみんなにそう言います)、生まれつき恋愛感情がなくてラッキーだなと思っていました。むしろ自分の中で一番好きな部分だったのです。

 

当時アセクシャルという言葉は知りませんでしたが、自分が恋愛感情がないこと、そして告白されたらどう感じるのかは今までずっと周りに説明してきました(男女に違いがなく、男子に告白されても女子に告白されている気持ちになる、等)。

わざわざ自分からは言いませんでしたが(別に向こうも興味ないと思いますし)、恋愛話になったり会話の流れで自然に話せる時は話すようにしてきました。

男子に告白されたくなかったのもありますし、私が「○○が好きなんだ」などと周りに誤解もされたくなかったからです。

伶はそうなんだ、とみんなに広めてもらってなるべく恋愛騒ぎから遠ざかりたかったのもあります(笑)すぐに信じてくれる人もいれば、数年かかってやっと「伶ちゃんは本当に恋愛感情ないんだね!」とわかってくれた友達もいました。人によって時間はまちまちです。

 

ただ留学した高校で、クリスチャンの先生方に「自分はこうなんだ」と説明したときに優しく「そうなんだね」と信じ、受け入れてくれたのはとても嬉しかったことを覚えています。今まで友達に言ってはいましたが、大人にはあまり言う機会も無かったので(言ったこともありますが信じてもらえないこともありました)、大人に初めて信じて受けいれてもらえたのはやはりとても感激しました。

そしてそのうちの先生の一人が、ある日「ニュースでイギリスに伶みたいな子がいるっていう記事をみたよ!100人に1人はいるみたい」(英語でいうAromantic Asexualの子だと思います)と教えてくれました。その時はアセクシャルという言葉は知らなかったのですが、私が自分以外にも同じような子がいるのだということを初めて知ることができた瞬間でした。とても嬉しかったです。

 

そして卒業後、日本に帰ってきて私に恋愛感情がないこと、なぜか、どのように感じるのかを説明した友達の一人がネットで検索してくれて、初めて「アセクシャル」という言葉に出会いました(笑)←自分で検索すらしていない(笑)。

そのおかげで、その後ACE FESTAなどにも参加させていただくことができ、他のアセクシャルの方々にお会いできてとても嬉しかったです。やはり存在を知るのと会えるのは別ですので。企画して下さった皆さま、本当にありがとうございました。

 

以上が私がアセクシャルと出会った経緯です。ただ私は今も自分が「アセクシャルです」と自己紹介はしていません。アセクシャルの方の中にもいろいろな方がいらっしゃるので(性嫌悪、性行為は別に好きではないけど平気、ハグも嫌い、キスは嫌いだけどハグは好き、等など)、自分の説明で他の方々もそうなんだと決めつけられてしまったら申し訳ないからです。

私も逆に、自分には当てはまらないアセクシャルの特徴をインターネットなどで見た人に「伶もこうなんだね」と誤解されたくはないなあと思っています。あくまでもみんなに「私は恋愛感情がありません。恋愛感情なければキス(ほっぺ)もハグも平気だけど、恋愛感情ある人は無理!みんな友達として大好きだし、男女の違いがないです。多分私にとっては○○ちゃんが女子に告白される感じだと思う(同性愛者の方であれば異性愛者に告白される感じ)」というように具体的に説明しています。

あくまでも自分の特徴を説明しているだけなので(その方が男性紹介されたり告白される確率も減るので防護目的です(笑))、カミングアウトという深刻さはまったくありません。

もしカミングアウトするかしないかで悩まれている方、そういう方法や選択肢もあるのかなと思います。

みんな結構普通にへー、となってくれます(笑)でも信じてもらえない時は辛かった時もありました(というか信じてくれる人の方が珍しいので)。

でも、ある時から「そりゃあ相手からしたら信じられないよなあ」と思うようになったのです。そして「信じてもらえたらラッキー!」と感じるようになってからは信じてもらえなくても心理的負担はほぼなくなりました(笑)。

「まあ信じられないよね」と一緒に笑い、でも一緒に過ごしていくうちに結構信じてくれるようになります。でもカミングアウトするしないは自由だと思います!私は言った方が断然人生楽なのでやっているだけですから。

 

もし自分はおかしいのでは・・・と悩んでいる方がいたら、決して罪悪感を感じる必要もないしおかしくもないのだということを知っていただければなと思います。

私は自分は「変わった人」だと自認はしています。やはり恋愛感情を持っている人の方が多いですし、圧倒的多数ですし、それが「普通」だと私も思っています。

でも、私は「変わっている」けど、それが悪いことだとは思わないし、「普通」である必要も無いのだと思います。

なぜなら恋愛感情をもっていて「普通」だとカテゴライズされてしまっているかもしれない人達も、みんなそれぞれユニークで違う部分があり、同じなどではなく、そこも素敵な部分だからです。

 

だから恋愛感情があろうとなかろうと、みんな違ってみんな良い!なのです!むしろ結婚してくれる人達に私は感謝しています(誰かがしてくれないと人類は滅びますので(笑))。私はアセクシャルの中でも恋愛感情ラッキー!と思っている変なアセクシャル(笑)だと思っているのでやっぱり変わってるのだろうと思います。でも、深刻にならずむしろラッキーだという考え方もあるのかもしれないという選択肢(?)を追加できれば幸いです。

皆さん本当に素敵です!胸をはっていきましょう!